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運送業におけるパワハラ対応

はじめに

 今やパワハラは、業界を問わず対応が必要な問題ですが、特に運送業では、長時間労働等の過酷な労働環境がパワハラを発生させやすいため、パワハラ対応が重要になります。そこで、この記事では、パワハラの類型、パワハラ放置のリスク、パワハラ発覚時の対応方法について詳しく解説します。

パワハラの6つの類型

 厚労省の定めたパワハラ防止指針では、職場におけるパワハラを6つの類型に分類しています。以下では、運送業における具体例とともにご紹介します。

①身体的な攻撃

 暴行や傷害など、身体に危害を加える行為。
 例) 荷物の積み下ろし中に故意に重い荷物をぶつける。

②精神的な攻撃

 脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言など。
 例) 配送ミスを大勢の前で長時間にわたり叱責する。

③人間関係からの切り離し

 隔離、仲間外し、無視など。
 例)特定のドライバーを意図的に孤立させる。

④過大な要求

 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制など。
 例)無理な配送スケジュールを組み、達成できないと罰則を与える。

⑤過小な要求

 業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと。
 例)ベテランドライバーに長期間にわたり車両清掃のみを命じる。

⑥個の侵害

 私的なことに過度に立ち入ること。
 例)プライベートな交友関係や恋愛関係について執拗に聞き出す。

 これらの行為が、優越的な関係を背景に行われ、業務上必要かつ相当な範囲を超え、労働者の就業環境を害する場合、パワハラに該当します。

パワハラを放置した場合のリスク

(1)生産性の低下

 運送業では、ドライバーの心理状態が安全運転に直結します。パワハラにより精神的ストレスを抱えたドライバーは、集中力が低下し、事故のリスクが高まる可能性があります。

(2)人材の流出

 優秀なドライバーや事務職員が退職し、人材不足に陥る可能性があります。特に運送業界では慢性的な人手不足が問題となっており、優秀なドライバーがパワハラ被害を理由に退職するのは、大きな痛手でしょう。

(3)企業イメージの悪化

 パワハラ問題が公になれば、企業の社会的評価が低下し、取引先や顧客からの信頼を失う可能性があります。運送業は顧客との信頼関係が重要なため、特に注意が必要です。

(4)法的リスク

 被害者から企業に対して損害賠償請求がなされる可能性があります。企業はパワハラ防止措置を講じる義務がありますので、義務を怠った場合、高額な賠償金を支払うことになるかもしれません。

パワハラが発覚した場合の対応方法

 パワハラが発覚した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。

(1)事実関係の調査

 ・被害者、加害者双方から丁寧に聞き取りを行います。
 ・第三者の証言や客観的な証拠(メール、業務記録など)を収集します。
 ・調査の過程で被害者のプライバシーを厳重に保護します。

(2)被害者のケア

 ・被害者の心身の状況を確認し、必要に応じて医療機関の受診を勧めます。
 ・加害者との接触を避けるため、一時的な配置転換などを検討します。
 ・心理カウンセリングの提供を検討します。

(3)加害者への対応

 ・事実関係が確認された場合、就業規則に基づいて適切な処分を行いましょう。
 ・再発防止のため、加害者に対して研修や教育を実施します。
 ・必要に応じて配置転換降格などの人事措置を検討します。

(4)再発防止策の策定と実施

 ・パワハラ防止のための社内規程を見直し、必要に応じて改定します。
 ・全社員を対象としたハラスメント防止研修を定期的に実施します。
 ・相談窓口の設置や周知を徹底します。

(5)組織風土の改善

 ・トップダウンでハラスメント撲滅の方針を明確に示します。
 ・中間管理職への教育を強化し、適切なマネジメントスキルを身につけさせます。
 ・従業員の声を積極的に聞く機会を設け、風通しの良い職場環境を作りましょう。

(6)損害賠償請求への対応

 ・顧問弁護士や専門家と相談し、適切な対応策を検討します。
 ・保険が使える場合は、保険会社との協議を行ってください。

まとめ

 パワハラ防止のためには、ドライバーの労働時間管理や休憩時間の確保、適切な業務分配など、労働環境の改善にも同時に取り組むことが重要です。パワハラ問題は、単に加害者個人の問題ではなく、企業全体の責任として捉える必要があります。適切な対応と再発防止策の実施により、健全な職場環境を構築し、従業員の安全と企業の持続的な成長を両立させましょう。

Last Updated on 2024年10月31日 by segou-partners-logistic

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