はじめに
運送業界は、物流の重要な一部として、多くの労働者が危険な作業に従事しています。この業界では、労働安全衛生法の遵守が非常に重要です。この記事では、労働安全衛生法の概要、運送業における労働安全衛生法違反の現状、違反した場合の罰則、不利益を回避する方法、そして弁護士の必要性について詳しく説明します。
労働安全衛生法とは何か
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする法律です。この目的を実現するために、事業者に対して、労働者の安全と健康を確保するための様々な措置を講じる義務を課しています。具体的には、機械の安全対策、危険防止措置、健康診断の実施、安全衛生教育の提供などです。
運送業における労働安全衛生法違反の現状
運送業界では、荷物の積み下ろしや輸送作業中に事故が発生することがあります。特に高所作業や重量物の取り扱いにおいて、安全対策が不十分なことが多く、労働安全衛生法違反が見られます。例えば、墜落制止用器具の未使用や作業手順の不備が問題となっています。また、運送業界では、長時間労働や過重労働が一般的であり、これも労働安全衛生法に違反する可能性があります。
最近の改正では、最大積載量2トン以上5トン未満の貨物自動車においても、荷役作業時の昇降設備の設置と保護帽の着用が義務付けられました。
労働安全衛生法に違反した場合
労働安全衛生法に違反した場合、事業者は、以下のようなリスクを負います。
(1)都道府県労働局長・労働基準監督署長による行政処分
労働安全衛生法違反が疑われる場合、事業者は、労働基準監督官による立ち入り検査等を受けます。そして、検査等の結果として違反が発見された場合は、都道府県労働局長または労働基準監督署長により、作業停止や建造物の使用停止等の行政処分が命じられる可能性があります。そうなってしまうと、操業が困難になる場合もあります。
(2)刑事罰
労働安全衛生法に違反した場合、刑事罰を受けることもあります。刑事罰の重さは、違反行為の内容によって様々ですが、罰金刑だけでなく、懲役刑の可能性もあるので、注意が必要です。また、違反行為者個人だけでなく、会社自体も刑事罰の対象になります(両罰規定)。
たとえば、「労働者に対する危険防止義務違反」の場合、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金の対象になります。
(3)入札に関する指名停止処分
公共入札に参加している事業者について、労働安全衛生法が判明した場合、一定期間、入札への指名停止処分を受けるケースがあります。
(4)レピュテーションリスク
労働安全衛生法違反の事実が広く報道されれば、労働者の安全確保等を十分に行わない企業と認知されてしまいます。これにより、売上の減少や人材確保の難航が発生するリスクがあります。
不利益を回避する方法
日頃から、労働安全衛生法に違反しないように、チェックリストを作成する等して、社内の規範意識の向上に努めるのが第一です。
また、仮に違反してしまったとしても、いきなり大きな行政処分がなされることは稀で、通常は、まず行政指導が行われます。この行政指導にきちんと対応し、再発防止策等を検討して実践すれば、行政処分等を回避できることも多いです。
刑事罰に対しても同様で、違反を指摘された後の会社の対応は、裁判所も見ています。違反発覚後の取り組みが評価されれば、刑事罰を軽くすることも可能です。
弁護士の必要性
コンプライアンス体制の構築や、行政庁への対応、刑事裁判への対応は、弁護士の得意分野です。労働安全衛生法への取組みにお悩みの運送業の方は、ぜひ一度、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。

Last Updated on 2025年2月18日 by segou-partners-logistic