1.社会保険制度の概要
社会保険とは、国民が一定の要件を満たした場合に、病気・ケガ・老後・失業などのリスクから生活を守るための公的制度です。主に、以下のような種類があります。
• 健康保険:従業員やその家族が病気・ケガ等で医療サービスを受ける際の医療費補助
• 厚生年金保険:老後や障害、死亡した際に従業員やその家族に年金給付が行われる
• 雇用保険:失業時や育児休業・介護休業取得時に給付を受ける
• 労災保険:業務上または通勤途上のケガや死亡時に給付を受ける
一般企業の従業員であれば、週の所定労働時間や雇用期間などの条件を満たすことで各保険に加入する必要があります。運送業の場合もこの基本的な仕組みは変わりませんが、後述のとおり特有の注意点がいくつか存在します。
2.運送業特有の注意点
(1) 多様な雇用形態
運送業では、正社員のほかにもアルバイト・パート・業務委託ドライバーなど、多様な雇用形態が利用されています。雇用契約の場合、労働時間や雇用期間によって社会保険への加入義務が生じます。一方、業務委託契約によるドライバーは「労働者」ではなく「個人事業主」の扱いとなるため、社会保険の適用範囲から外れ、自身で国民健康保険・国民年金への加入を行う必要があります。
(2) ドライバーの入れ替わり
繁忙期や閑散期など景気や季節による仕事量の変動が大きいのも運送業の特徴です。これに伴い従業員の入れ替わりが発生することが多く、社会保険・年金の手続きも短いスパンで発生しがちです。入社手続きでは、雇用保険や健康保険・厚生年金保険の加入手続きを速やかに行い、退社手続きや異動時の手続きでも漏れがないよう管理体制を整える必要があります。
(3) パート・アルバイト
2024年10月からは短時間労働者の社会保険適用範囲が拡大しており、従業員数が常時51人以上の企業の場合、一定の要件(週の所定労働時間が20時間以上、所定内賃金が月額賃金8.8万円以上、2か月を超える雇用の見込みがある、学生ではない)を満たせばパート・アルバイトでも社会保険に加入する必要があります。運送業においては、繁忙期だけアルバイトやパートを雇用するケースが多いため、適用基準に該当する場合は手続きが必要です。
3.運送業のドライバーの社会保険加入について
正社員はもちろん、パートやアルバイトであっても、先述の要件を満たす場合には、社会保険への加入義務が生じます。
ただし、実際には、「シフトが不定期で年間の契約期間が短い」、「週の労働時間が20時間を下回る」など、加入義務の境界線上にあるケースが多いため、実際の就労状況と法律上の基準を照らし合わせて適切に判断する必要があります。誤った判断を行うと、将来的に保険料を追徴されるリスクがあるため注意が必要です。
4.ドライバーが交通事故に遭った場合、労災保険の適用について
ドライバーが業務中や通勤途中に交通事故に遭った場合、基本的には労災保険(労働者災害補償保険)の対象となります。特に、運送業では業務中の運転だけでなく、荷積み・荷降ろし作業などによる負傷も労災の対象となることがあります
運送会社としては、万が一の交通事故が起きた際、労災保険が速やかに適用されるよう体制を整えておくことが重要です。
5.運送業における年金手続きの流れ
運送業も含めた一般的な事業所の年金手続きの大まかな流れは次のとおりです。
従業員が入社した際は、労働時間や雇用期間などの要件を満たすかを慎重に確認し、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届の提出を忘れずに行います。退社が決まった場合は、退職日の翌日から5日以内に資格喪失届を提出します。
年金制度は随時改正があり、適用拡大の対象となる短時間労働者などの範囲も変化しているため、正確な情報の収集、管理が欠かせません。
まとめ
社会保険や年金の手続きは、運送業における適切な労務管理の基本であり、事業者とドライバー双方にとって重要な課題です。手続きを怠ると、事業者側に追加の負担や法的責任が生じるだけでなく、ドライバーが十分な補償を受けられなくなるリスクがあります。特に、雇用形態の多様化やドライバーの入れ替わりが激しい運送業では、社会保険や年金制度の適用状況を適宜確認し、適切な対応をとることが求められます。
事業主の皆様は、専門家と連携しながら、最新の法改正や制度の変更にも対応しつつ、適正な労務管理を進めていくことが望まれます。

Last Updated on 2025年4月2日 by segou-partners-logistic