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トラック運送業で燃料コストが上昇したのに価格を据え置きすることは下請法に違反しないか

1 結論

 親事業者が、下請事業主から燃料コストの上昇を理由として単価の引上げを求められたにもかかわらず、十分な協議を行わずに、一方的に単価を据え置くことは、下請法違反となるおそれがあります。
 実際に、令和7年3月11日、「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」が閣議決定されたことにより、協議を適切に行わない代金額の決定を禁止する条項(改正下請法第5条2項4号)が新設されることが決まっています((令和7年3月11日)「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」の閣議決定等について | 公正取引委員会をご参照ください)。

2 理由

(1) 現行下請法について

 下請法4条1項5号は、親事業主が、発注した内容と同種または類似の役務提供に対して、通常支払われる対価に比べて著しく低い額を対価として不当に定めること、いわゆる「買いたたき」を禁止しています。
 「不当」であるかを判断する際には、下請代金の額の決定にあたり、親事業者と下請事業者との間で十分な協議を行ったか否かが重要視されます。
 例えば、燃料コストが下落した場合に単価の引下げを行っていなかったケースであっても、それを理由として、親事業主が下請事業者からの協議の申出に一切応じないことは、下請法違反となるリスクがあります。特に、燃料コストの上昇幅が下落幅を大きく上回る場合、対価を据え置くことにより、下請事業者が大幅なコスト上昇の負担を追うことになるため、「買いたたき」になりえます。そのため、このようなケースにおいても、下請事業者からの協議の申出に応じたうえで、下請事業者から単価引上げに至った事情や、単価引上げ幅の根拠について説明を受けることが望ましいといえます。

(2) 改正下請法について

 下請法の改正により、協議を適切に行わない代金額の決定が、新たに禁止されることになります(改正下請法第5条2項4号)。これは、親事業主が、コスト上昇に見合わない価格を一方的に据え置くことが問題視され、親事業主と下請事業者の対等な価格交渉を確保する目的で、新設される条項です。
 そのため、上記のように、下請事業者から価格協議の申出があったにもかかわらず、親事業主が協議に応じない場合だけでなく、親事業主が下請事業者に対して必要な説明を行わない場合、親事業主が下請事業者の説明を一切聞き入れない場合等も、下請事業者の利益を不当に害する行為であるとして、下請法違反となるおそれがあります。

3 対応策

 燃料価格が変動する度に、親事業主と下請事業主との間で協議を行うことは、双方の負担が大きく、現実的ではありません。
 このような手間を省きつつ、親事業主が下請法違反とならないようにする対応策として、燃料価格の上昇・下落によるコストの増減分を別建ての運賃として設定する、燃料サーチャージ制があります。
 具体的には、以下の表のとおり、燃料サーチャージ制を導入することが考えられます。

改定する価格帯燃料サーチャージ算出上の価格算出上の燃料価格上昇額
基準価格●円未満サーチャージ制を廃止サーチャージ制を廃止
●~〇円未満▲円(「改定する価格帯(●~〇円)」の範囲内で設定可)▲-●円
〇~〇円未満・・・円・・・円
〇~〇円未満・・・円・・・円

①「基準価格」を設定
 以下の価格を「基準価格」とする方法があります(上記表の「●円」)。
 ・運賃届出時点の燃料価格
 ・運送契約を交わした時点の燃料価格
②「改定する価格帯」を設定
 燃料価格は日々変動するため、その都度改定するのではなく、具体的な価格帯を設定します(上記表の「〇〜〇円未満」)。
③「燃料サーチャージの算出上の価格」設定
 上記の「改定する価格帯」の範囲内で自由に設定することができます(上記表の「▲円」)。
④「算出上の燃料価格上昇額」を算出
 「燃料サーチャージの算出上の価格」から「基準価格」を控除することにより、「算出上の燃料価格の上昇額」が算出されます(上記表の「▲―●円」)。
⑤「燃料サーチャージ額」の算出
 以下の算定方法による「燃料サーチャージ額」を現に適用している運賃に加算することになります。
 【距離制の燃料サーチャージ額】
 燃料サーチャージ額(円)=走行距離(km)÷燃費(km/ℓ)×「算出上の燃料価格上昇額(▲―●円)」(円/ℓ)
 【時間制の燃料サーチャージ額】
燃料サーチャージ額(円)=平均走行距離(km)÷燃料(km/ℓ)×「算出上の燃料価格上昇額(▲―●)」(km/ℓ)

 国土交通省が策定する「トラック運送業における燃料サーチャージ緊急ガイドライン(トラック運送業における燃料サーチャージ)」においても、燃料サーチャージ制の利用が推奨されているため、下請法が改正される前に、是非導入をご検討ください。

Last Updated on 2025年10月10日 by segou-partners-logistic

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