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物流・運送業のための改正下請法(取適法)解説と対応方法

その他

1 はじめに

 2026年1月1日から、改正下請法(以下「取適法」といいます。)が施行されます。2025年5月23日の法改正から施行までわずか7か月弱しかなく、対象企業様は、異例のスピードで対応を余儀なくされているものと思われます。
 そして、このたびの取適法の改正内容において、新しい適用対象取引として、「特定運送委託」が定められました。また、その他にも、新しく「従業員数基準」が設けられ、適用対象事業者が拡大されました。さらに、手形払が禁止される等、禁止行為が拡大しております。
 このように、今回の改正が物流・運送業を営む企業様に与える影響は非常に大きいものと思われます。そこで、取適法に対して、適用対象となる物流・運送業がどのように対応すればよいかについて、新しく導入される取引内容である「特定運送委託」を中心に、以下、解説させていただきます。

2 下請法改正の経緯

 (1)近年、アベノミクスにより大企業には利益がもたらされました。その一方で、中小企業はその恩恵にあずかれず、デフレ脱却が図れない状況が続いていました。その大きな要因として、「下請けは元請けに従うのが当然」「良い製品・サービスは、安く調達するのが当然」「受注者はコストを削り、値下げ競争を行うのは当然」といった従来の取引慣行が根強く残っており、これが構造的な賃上げを阻んでいると考えられました。
 (2)そこで、デフレ脱却を図るには、大企業と中小企業の「取引適正化」に向けた取組を行い、「構造的な賃上げ」の原資の確保が必要であると考えられました。具体的には、新たな商慣行として「適正な価格転嫁」を定着させることが必要不可欠であるとして、①交渉プロセスの適正化、②支払手段の適正化、③適用範囲の拡大を通じて、サプライチェーン全体の取引を適正化することで、わが国経済において、インフレに負けない持続的な賃上げと経済成長の基盤を強化することが謳われました。そのための具体的な法政策が、今回の下請法改正です。  

3 下請法における指導・勧告

 (1) 下請法の指導件数
 下記のグラフのとおり、下請法の指導件数は、年々増加傾向にあります。

 引用元:https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/may/230530.html

 (2) 下請法の勧告件数
 また、下請法の勧告件数も近年急増しており、注意が必要です。

 引用元:公正取引委員会「(令和7年5月12日)令和6年度における下請法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組」

(3) 勧告を避けるべき理由
 ア. 勧告の主な内容は以下の①から⑤のとおりです。このように勧告の対象となった 企業は多      くの対応を余儀なくされます。
 ①原状回復措置
  減額分などの下請事業者への返還
 ②再発防止措置
  ・取締役会における再発防止措置等の確認
  ・社内体制の整備
  ・発注担当者に対する下請法の研修
  ・法務担当者による下請法の遵守状況に関する定期的監査
 ③再発防止措置の役員・従業員への周知徹底 
 ④採った措置の下請事業者への周知
 ⑤採った措置の公取委への報告    
  (参考:鈴木満著「実例で紐解く独禁法・下請法」231頁・232頁(第一法規))
 イ.企業名の公表とリピュテーションリスク  
 また、勧告の対象となった企業は、その企業名をマスコミに発表されることになって
いることから、企業の信用やブランド価値が低下し、損失を被るリスクがあります。
 ウ. 小括
 そのため、下請法(取適法)の対象企業としては、公正取引委員会からの勧告を受けることをできる限り避けるべく対応しなければなりません。

4 特定運送委託

 (1)下請法が適用される取引(取引内容基準)

 現行の下請法では、適用される取引として、従前の製造委託・修理委託・情報成果物作成委託、役務提供委託が定められていました。
 そのため、現行の下請法では、自己利用役務は対象外であり、運送委託は再委託のみが、役務提供委託として法の適用対象とされていました。
 これに対し、取適法では、「特定運送委託」という新たな委託類型が追加され、発荷主から運送事業者への一定の委託も適用対象となります(取適法2条5項)。
 これは、「特定運送委託」の要件として発注者である発荷主が、①物品の販売、②物品の製造、③物品の修理、④情報成果物の作成、これらを業として請け負っている場合、実質的に再委託構造にあることから、追加されたものです。
 逆に、発注者(発荷主)の業務が4事業(物品販売、物品製造、物品修理、情報成果物作成)のいずれにも該当しない場合は、特定運送委託の対象とはなりません(例:リース業者がリース物品をユーザーの事業所に運送委託する場合)。

 (2) 特定運送委託の定義  
 事業者が業として行う販売、業として請け負う製造業者若しくは業として請け負う修理の目的物たる物品又は業として請け負う作成の目的たる情報成果物が記載され、記録され、若しくは化体された物品の当該販売、製造、修理又は作成における取引の相手方(倉庫業者等、当該相手方が指定する者を含む。)に対する運送の行為の全部又は一部を他の事業者の委託することをいいます。平たく言うと、発荷主として運送を委託することを意味します。
 なお、運送のみが対象であり、荷積み、荷下ろし、倉庫内作業等は含みませんので、ご注意ください。

(3) 特定運送委託の類型
   特定運送委託の類型としては、以下の4類型があります。
 ア.類型①

 ・物品の販売を行っている事業者が、その物品の販売先(当該販売先が指定する者を含
む。)に対する運送の全部又は一部を他の事業者に委託する場合
 例)家電小売業者が、取引先に対し、販売する家電を引き渡す際に、その家電の運送
を他の事業者に委託する場合
 ・「販売の目的物たる物品」には、商品に添付されて提供される景品等、有償商品の一部
として提供される物品も含まれます。
 ・事業者が顧客に交付する必要のある取引関係書類のみを運送する場合は、それが当該販
売等における取引の目的物に該当しない限り、特定運送委託には当たりません。

 イ.類型②

 ・物品の製造を請け負っている事業者が、その物品の製造の発注者(当該発注者が指定する者を含む。)に対する運送の全部又は一部を他の事業者に委託する場合
 例)精密機器メーカーが、大手機械器具メーカーから製造を請け負い完成させた精密機器を引き渡す際に、その精密機器の運送を他の事業者に委託場合
 ※この製造発注は取適法の適用対象取引に限られません

 ウ.類型③

 ・物品の修理を請け負っている事業者が、その物品の修理の発注者(当該発注者が指定する者を含む。)に対する運送の全部又は一部を他の事業者に委託する場合
 例)精密機器修理業者が、家電販売業者から修理を請け負い修理を完成させた精密機器を引き渡す際に、その精密機器の運送を他の事業者に委託する場合
この修理発注は取適法の適用対象取引に限られませ

 エ.類型④

 ・情報成果物の作成を請け負っている事業者が、当該情報成果物が記載されるなどした物品※※の作成の発注者(当該発注者が指定する者を含む。)に対する運送の全部又は一部を他の事業者に委託する場合
 例)映像制作業者が、クライアントから作成を請け負い完成させた映像製作物を引き渡す際に、その映像制作物の運送を他の事業者に委託する場合
 ※ この作成発注は取適法の適用対象取引に限られません
 ※※ 例)広告用ポスター、設計図、会計ソフトのCD-ROM、建築模型、ペットボトルの形のデザインの試作品等

5 特定運送委託における【取引の相手方・・・に対する運送】とは

 (1)取引の相手方に対する運送とは、事業者による販売等の特定の事業における取引の相手方等 の占有下に当該取引の目的物等の物品を移動することをいいます。
 ・運送以外の荷積み、荷下ろし、倉庫内作業等の附帯業務は含まれません
 ・「運送」と一体的に行われる養生作業、固縛(こばく)、シート掛け等は、委託事業者から特別   の指示を受けて行うものを除いて、通常は「運送」に含まれま
 ・輸送手段は、自動車に限らず、船舶、航空等その他の輸送手段を問いません
 ・受注者の業種についても、主たる事業として運輸業を営んでいるか否かを問いません
 ・販売等の目的物たる物品の部品・半製品等については、それ自体が独立して販売等の取引の目的物に該当しない限り、特定運送委託の対象となる物品ではありません
 →これらの運送委託は特定運送委託には該当しません
 (2)取引の相手方
 ・親子会社間、兄弟会社間も含まれますが、実質的に同一会社内での取引とみられる場合は、用上問題としません
 ・海外法人である場合や貨物の発送地又は到着地が国外である場合であっても、委託事業者と中小受託事業者との特定運送委託が日本国内で行われた取引であれば、「特定運送委託」に該当し得ます
 (3)特定運送委託における【取引の相手方・・・に対する運送】に当たらない運送形態
 ・横持ち運送(同一法人の拠点間運送) 
 →同一法人の内部行為にすぎません 
 ※「経路の一部」として最終的にエンドユーザーに届く取引であれば、特定運送委託に該当します
 ・引取り運送(取引の相手方から修理対象物を引き取る・下取りを委託する運送)
 →「取引の相手方」に対する運送とはいえません
 ※「取引の相手方」に対する運送(特定運送委託となる運送)と一体不可分の取引として発注した場合、一体として取適法の適用対象となりえます
 ・産業廃棄物(無価値)の運搬、サンプル品の運送、ダイレクトメッセージ・連絡文書等の運送
 →通常、「取引の相手方」に対する運送には該当しません
 ・製造等の発注者から受注者に対する無償提供する支給品の運送
 →通常、「取引の相手方」に対する運送には該当しません(有償提供する支給品は該当する)
 ・贈与に係る物品(中元、歳暮等)を受贈者に対してする運送
 →通常、「販売・・・における取引の相手方」に対する運送に該当しません
 但し、有償の商品の一部として提供されているもの(商品に添付されて提供される景品等)は除きます

6 特定運送委託と物流特殊指定との関係

 (1)物流特殊指定(正式名称:特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法)
 荷主(いわゆる真荷主[しんにぬし])と物流事業者との取引における優越的地位の濫用を効果的に規制するために指定された、独占禁止法上の告知です。
 取適法とは、規制内容が少し異なるので、下請法の改正後も引き続き適用があります。
 また、荷主が物流事業者に対して、継続的に物品の運送又は保管を委託している場合において、荷主及び物流事業者の資本金や取引上の地位が、物流特殊指定が定めるいずれかの関係にあるときは、それぞれ特定荷主及び特定物流事業者として、物流特殊指定の適用対象となります。
【特定運送委託と物流特殊指定との関係】

※③における取引上の地位の優劣の判断に際しては、荷主と物流事業者の関係ごとに、取引依存度、荷主の市場における地位、取引先変更の可能性等を総合的に考慮する

【特定運送委託(取適法)と物流特殊指定の各禁止行為の違い】

7 貨物自動車運送事業法(改正トラック法)12条・24条に基づく書面交付義務と取適法4条に基づく通知義務との関係

【貨物自動車運送事業法(改正トラック法)12条に基づく書面交付義務と取適法4条に基づく通知義務との関係】

8 違反に対する対応強化(面的執行の強化)

 また、事業所管官庁へ権限が付与され、面的執行が強化されました。
 (1)改正前
 下請法では、下請事業者が親事業者の下請法違反の疑いについて、公正取引委員会また
は中小企業庁に知らせたことを理由として、取引数量の削減、取引停止、その他不利益な
取扱いをすることが禁じられていました
 (2)改正後
 改正後は、以下のとおりとなります。
 ① 取適法においては、中小受託事業者が違反行為を事業所管省庁の主務大臣に申告した場合も、同様に報復措置が禁止されることに 
 ②公取委・中小企業庁・事業所管官庁に対し、委託事業者や中小受託事業者に関する情報の相互提供の権限を付与
 ③ 各業種の所管省庁は、自ら委託事業者に対して指導および助言を行うことができることに(取適法8条)
 例)物流業界における国土交通省の「トラック・物流Gメン」
 上記の改正により、中小受託事業者は自らと関係性の深い所管省庁に安心して申告できるようになり、これまでよりも効果的な対応が行われることが期待されるとともに、物流業界においても、トラック・物流Gメンから委託事業者に対して指導及び助言が行われる件数が増加することが予想されます。

9 まとめ

 上記のとおり、新しく導入される取引内容である「特定運送委託」を中心に、改正下請法(取適法)の内容について、解説させていただきました。今回の改正については、その他にも、「禁止行為の拡大(協議を適切に行わない代金額決定の禁止等、手形払い等の禁止)」「適用対象事業者の拡大(従業員基準の追加)」「適用対象取引の拡大(型や専用治具の製造委託・無償保管)」等が定められています。
 今回の改正が、物流・運送業を営む企業様に与える影響は非常に大きいことが予想されます。もし下請法(取適法)への対応に悩まれている物流、運送業の方がいらっしゃいましたら、当事務所にお気軽にご相談ください。

Last Updated on 2025年12月5日 by segou-partners-logistic

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