はじめに
令和5年に成立したフリーランス新法ですが、いよいよ令和6年11月1日から施行されることになりました。運送業界は、フリーランスドライバーが数多く活躍されているため、フリーランス新法による影響が大きいといえます。
そこで、この記事では、運送業界の方向けに、フリーランス新法の概要を解説します。
フリーランス新法とは
フリーランス新法の正式名称は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。フリーランス(一人会社も含む)のことを「特定受託事業者」と定義し、この特定受託事業者を保護するためのルールを整備しました。大きく分けると、独占禁止法・下請法的なルールと、労働法的なルールが定められました。
これらのルールに違反した委託事業者は、行政処分等を受ける可能性があります。
独占禁止法・下請法的なルール:取引の適正化
これまで、立場の弱いフリーランスドライバーは、委託事業者(運送会社)から不適正な取引を押し付けられることがありました。そこで、このような事態を予防するため、独占禁止法・下請法的なルールが整備されました。
(1)取引条件の明示
委託事業者は、給付内容や報酬額、支払期日等を、書面又はメール等で明示しなければなりません。下請法の3条書面に類似したルールです。
(2)報酬の早期支払い
委託事業者は、納品から60日以内(再委託の場合は30日以内)に報酬を支払わなければなりません。
(3)禁止行為
委託事業者は、フリーランスに対して以下の行為をしてはなりません。
①フリーランスの帰責事由がない場合の受領拒否、報酬減額、返品、内容変更、やり直し ②通常相場に比べて著しく低い報酬の額を不当に定めること ③正当な理由なく、委託事業者の指定する物の購入や役務の利用を強制すること ④委託事業者のために金銭、役務その他の経済的な利益を提供させること |
労働法的なルール:就業環境の整備
これまで、立場の弱いフリーランスドライバーは、就業環境が整備されていない状態で(いわば無理をして)働いていることがありました。そこで、このような事態を予防するため、労働法的なルールが整備されました。
(1)募集情報の的確表示
委託事業者は、広告等でフリーランスの募集を行う場合、虚偽の表示や誤解を表示させる表示をしてはならず、表示を正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
(2)妊娠・出産・育児・介護との両立に対する配慮
委託事業者は、フリーランスに6ヶ月以上の継続的な業務委託をする場合、フリーランスからの申出に応じて、そのフリーランスが妊娠・出産・育児・介護と両立して業務を行えるよう必要な配慮をしなければなりません(継続的でない業務委託の場合は、努力義務にとどまります)。
具体的な配慮の内容のうち、運送業として可能なものとしては、たとえば以下のような配慮が挙げられます。
・妊婦検診の時間を確保するために打ち合わせの時間を調整する。 ・育児や介護と両立可能な就業日や就業時間にする。 |
(3)ハラスメント対策に係る体制整備
委託事業者は、セクハラ、パワハラ、マタハラ、カスハラ等のハラスメントについて、フリーランスからの相談に対応するために必要な体制を整備しなければなりません。
(4)解除予告と理由開示
委託事業者は、フリーランスとの継続的業務委託契約を解除する場合は、少なくとも30日前に予告しなければなりません。また、フリーランスから求められた場合、遅滞なく解除理由を開示しなければなりません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。フリーランスドライバーと業務委託契約等を締結している運送会社としては、新法に対応するため、フリーランスドライバーへ業務委託をする際の業務フローを見直す必要があります。対応についてご不明な点は、お気軽にお問合せください。
Last Updated on 2024年8月28日 by segou-partners-logistic