1 はじめに
製造委託を受けた取引先等から、「運送費は支払うから、出荷時に所有権を当社に移転したうえで、御社で業者を手配して、輸送してほしい」などといわれることがあるかもしれません。しかし、他社の製品を、実運送事業者の行う運送を利用して貨物を輸送する場合、貨物利用運送事業法に抵触するおそれがあります。
この記事では、どのような行為が貨物利用運送事業法によって規制されている「貨物利用運送事業」にあたるか、どうすれば適法に他社製品を輸送することができるかについて解説します。
2 貨物利用運送事業とは
貨物利用運送事業とは、他人の需要に応じ運送責任を負って、有償で実運送事業者を利用して貨物を運送する事業をいいます。貨物利用運送事業のうち、船舶・航空・鉄道・トラックのいずれか一つの輸送手段を利用する場合には、「第一種貨物利用運送事業」に該当し、国土交通大臣の登録を受ける必要があります。
取引先等の資材・商品等を、運賃を受け取って輸送する行為は、貨物利用運送事業に該当します。多くの場合はトラックのみを利用して輸送することになると思いますので、第一種貨物利用運送事業として、国道交通大臣の登録が必要となるでしょう。
3 貨物利用運送事業に当たらない行為
実運送事業者を利用して自社貨物を運送するといった自らの需要に応じる行為や、無償で貨物利用運送を行う行為は貨物利用運送事業には該当せず、登録等の必要はありません。
また、貨物利用運送と外形的に類似した事業形態として、「貨物取次事業」があります。貨物取次事業とは、荷主の需要に応じ、有償で、運送事業者への貨物運送の委託や取次ぎもしくは運送事業者からの受取りを行う事業です。貨物利用運送事業との違いは、貨物利用運送事業は荷主に対して運送責任を負うものであるのに対し、貨物取次事業は運送責任を負わない点にあります。また、貨物取次事業には国土交通大臣による登録等は不要です。
4 他社製品を輸送するには
(1)第一種貨物利用運送事業の登録をすること
貨物利用運送事業に該当するとしても、国土交通大臣による第一種利用運送事業の登録を受けたうえで、利用運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けることで、輸送を行うことができます。
ただし、第一種利用運送事業の登録には2~3か月、利用運送約款の認可には1か月を要します。
(2)運賃をとらずに輸送すること
貨物利用運送事業は、「有償で」行うことが要件になっていますので、先述のように無償で輸送すれば、貨物利用運送事業にはあたりません。ただし、実質的に運賃を上乗せした価格で建築の仕事の依頼を受けた場合や、製品を売却した場合等には、運賃をとっているとみなされる場合がありますので、ご注意ください。
(3)「自社」の製品を輸送すること
貨物利用運送事業にあたるのは、「他人」の製品を運送することです。所有権を一時的に移転させたり、所有権の移転時期をずらしたりすることで、輸送時点で自社の製品・資材として輸送すれば、貨物利用運送事業にはあたりません。
(4)貨物取次事業を行う
前記のように、貨物取次事業であれば、国土交通大臣による認可は不要です。この場合には、得意先との間で取次ぎ契約を、実運送事業者との間では運送契約を締結します。そして、得意先からは取次料金と運賃を受け取り、実運送業者へ運賃を支払うことになります。契約書等で、荷主に対して運送責任を負わない旨を明記しておくのがよいでしょう。
5 まとめ
人の需要に応じ、運送責任を負って、有償で、実運送事業者を利用して貨物を運送する行為は、貨物利用運送事業として、国土交通大臣による登録等が必要となります。
他社製品を輸送する際には、①貨物利用運送事業の登録等を取得する、②運賃をとらずに無償で輸送する、③自社のものとして輸送する、④貨物取次事業を行う、といった方法が考えられます。
6 おわりに
他社製品を輸送する際に、法的問題を確認したい場合や、契約書が法的に問題ないか不安な場合には、物流業界に詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。
Last Updated on 2024年1月23日 by segou-partners-logistic