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特殊貨物を運送する際の法的な注意点

物流・輸送

第1 はじめに

 乗り物や重量物、精密機械など、特殊な荷扱いや積付けを必要とする貨物のことを「特殊貨物」といいます
 このような特殊貨物を運送する場合、貨物の内容によって様々な規制が課されます。また、運送契約を締結する際にも注意すべき点が多々あります。
 そこで今回は、特殊貨物の中でも特に、重量物、危険物及び冷蔵・冷凍品を運送するにあたっての、法令上又は契約上の注意点について解説していきます。

第2 重量物の運送

1 重量物とは

 重量物とは、文字通り重量のある物のことをいい、何キロ以上という明確な定義づけがなされているわけではありません。冷蔵庫や洗濯機などの大型家電や工場で使用する機械など、人力で持ち上げることができないものは、すべて重量物と考えてよいでしょう。
 このような重量物は、通常の規格のトラックでは運べないため、ユニック車(トラッククレーン)やトレーラー車など特殊なトラックを利用する必要があります。

2 適用法令

 以下では、陸上輸送に関して適用される法令について説明します。

⑴ 道路法

 道路法は、道路を通行する車両の大きさや重量について制限を設けています。具体的に、大きさについては、幅2.5メートル・長さ12メートル・高さ3.8メートル、重量については、総重量20トン(高速道路や指定道路を通行する車両の場合は、25トン)が限度と定めており、この最高限度のことを、「一般的制限値」といいます。ただし、高速道路を通行する連結車については、長さの制限が緩和され、セミトレーラ連結車については16.5メートル、フルトレーラ連結車については18メートルとされています。
 そして、道路法は、①車両の構造が特殊である車両(トラッククレーン等)、あるいは、②輸送する貨物が特殊な車両で、幅、長さ、高さ及び総重量のうち、一つでも一般的制限値を超える車両のことを、「特殊な車両」と呼び、道路を通行する場合には、特殊車両通行許可申請をし、許可を得なければなりません
 通行が許可された場合でも、交付された許可証は、通行時に必ず当該車両に備え付ける必要があります。また、通行期間や通行経路などを指定された場合には、これを遵守する必要もあります。

⑵ 道路交通法

 道路交通法は、積載物の重量、大きさ、積載の方法について制限を設けており、これを超えることとなるような積載をして車両を運転するには、出発地を管轄する警察署長の許可が必要です。
 車両の構造又は道路若しくは交通の状況により支障がないと認められる場合には、積載物の重量、大きさ、積載の方法を限定した上で、許可がなされます。その際、付された条件も遵守する必要があります。

⑶ 道路運送車両法

 道路運送車両法は、自動車の安全性を確保するため、車体のサイズなどについて、「保安基準」を定めています。原則として、この保安基準に適合していなければ、道路を走ってはいけません。
 しかし、その構造や使用態様が特殊であることにより保安上、公害防止上支障がないと認められる車両については、保安基準の緩和がなされます。保安基準の緩和を受けるためには、地方運輸局長に申請書を提出し、基準緩和の認定を受ける必要があります。

3 運送契約時の注意点

 重量物の運送は、何をどのようなルートで運ぶかによって、運送方法や用いる機材・車両、適用法令が変わってきます。
 そのため、運送契約を締結する際には、まず、荷送人と運送業者との間で、運送の対象となる重量物の種類や数を確定した上で、陸路・海路・空路どれを用いるのか、陸路を利用する場合、どのようなルートをたどって目的地まで運ぶのかを決める必要があります。その後も、当事者間で入念な打ち合わせを行い、用いる機材や車両など細部にわたるまで合意を形成するのが望ましいでしょう。その際には、上記で述べたどの法令が適用されるのか、適用を外すための申請をすべきか等も考えなくてはなりません。
 また、当然、合意した内容は、後の紛争を予防するためにも、書面化しておくことは必須です。

第3 危険物の運送

1 危険物とは

 危険物とは、通常の状態で放置することにより、火災や爆発等の災害に結び付く危険性のある物質が多く含まれている物のことをいいます。具体的に、石油やガス、火薬や毒物などが例として挙げられます。

2 適用法令

⑴ 陸上運送の場合

 危険物を陸路で運送する場合、対象となる危険物ごとに異なる規制が課されています。
 例えば、消防法上の危険物を運送する場合には、「危険物取扱者」の資格を有する者が乗務する必要があったり、危険物の種類に応じて運送できる数量が決まっていたりします。
 消防法以外にも、高圧ガス保安法上の高圧ガスを運送する場合や火薬類取締法上の火薬類を運送する場合には、それぞれの法律に記載された事項を遵守しなければなりません。

⑵ 海上運送の場合

 危険物を海路で運送するにあたっては、国際海事機関(IMO)が、国際海上危険物規程(IMDGコード)、国際バルクケミカルコード(IBCコード)等の国際的な安全基準を定めています。日本では、これらの国際基準に基づき、船舶安全法に基づく「危険物船舶運送及び貯蔵規則」や「船舶による危険物運送基準等を定める告示」が制定され、運送用の容器や運送物への表示等について規制がなされています。

⑶ 航空運送の場合

 国際連合は、危険物を国際輸送する際の包括的なルールとして「危険物輸送に関する勧告」を策定しています。この勧告では、危険物の分類のほか、分類ごとに必要な包装やラベリングについて定めています。
 また、航空法においては、火薬類や、高圧ガス、引火性液体など10種類の危険物の輸送が禁止されており、これらを輸送した場合、罰則を科せられます。空港で荷物を預ける際、モバイルバッテリーやヘアスプレーなどが入っていないかの確認を受けるのは、この法律があるためです。

⑷ 商法572条

 商法572条は、「荷送人は、運送品が引火性、爆発性その他の危険性を有するものであるときは、その引渡しの前に、運送人に対し、その旨及び当該運送品の品名、性質その他の当該運送人の安全な運送に必要な情報を通知しなければならない。」と規定し、危険物に関する通知義務を荷送人に課しています。この通知義務は、陸路・海路・空路を問わず適用されるものです。
 もし、この通知をしなかったために、事故が発生した場合には、損害賠償責任を負うおそれもあるため、荷送人は注意が必要です。

3 運送契約時の注意点

 以上のように、危険物を運送する場合には、陸路・海路・空路のいずれで運送するかによって適用される法令や規則が変わってきます。そのため、運送契約を締結する際には、まずはこの点に注意し、運送可能な危険物に該当するのかを判断する必要があります。
 一口に危険物といっても、法律ごとに定義や種類が異なっているため、厳密に考えなくてはならないでしょう。

第4 冷蔵・冷凍品の運送

1 適用法令

 冷蔵・冷凍品については、重量物や危険物と異なり、直接法令で規制されてはいません
 ただ、食品衛生法の改正により、食品等事業者に対してHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務化されたところ、ここでいう食品等事業者には、食品の運送業者も含まれます。そこで、冷蔵・冷凍品に限られず、食品全般の運送業者は、HACCPに対応していくことが必要です。

2 運送契約時の注意点

 冷蔵・冷凍品を運送する上で、一番重要なのは、適正な温度を保って、商品の鮮度を管理することだといえます。そのため、運送契約を締結する際には、具体的な温度管理の方法を当事者間で合意する必要があります。
 貨物の積載方法や積載量によっても、貨物室内の温度は変化するため、契約時にはこの点にも留意するのが望ましいでしょう。

第5 終わりに

 以上が、特殊貨物を運送する際の法令上又は契約上の注意点です。
 この記事を読んでも分かるとおり、特殊貨物を運送する場合に適用される法令は様々で、その関係性は複雑です。また、今回紹介したのも、その法律の概要に留まり、実際に運送するとなった場合には、もっと細かく要件を見ていく必要があります。
 特殊貨物の運送をお願いしたい、もしくは、運送をお願いされたが、何に注意すればよいのか分からないとお困りの方は、物流分野に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

Last Updated on 2024年2月21日 by segou-partners-logistic

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